ゆきひかりエッセイ

当農場の筆者が毎月北海道新聞に連載していた農業のエッセイです。

ゆきひかりを作り続けて
Essay01

私は旭川でコメを栽培している農家だ。
農場から直接お客さんに届けているので消費者のコメに対するニーズには敏感にならざるをえない。
「ゆきひかり」を作り続けている。
一時期、北海道米のエースだったが、別の品種が開発され今では専門のお米屋さんにもほとんど置かれなくなった幻のコメだ。 食べた感じは粘りが少なく「うるち米」そのものの味。 食べ慣れている方はこの味は「ゆきひかり」だというのが直ぐにわかる。

私がこのコメに特に興味をもったのは4年前だ。 ある日、農場に一人の若い女性が訪ねてきた。 その女性は真剣な眼差しで「有機栽培で栽培されたゆきひかりを探しているのですが・・・。」と切り出した。 子供がアトピーなので安全に栽培されたゆきひかりを懸命に探しているとの事。 女性はさらに、「何とか農薬をあまり使わずに有機栽培で栽培して頂けないだろうか」と求めてきた。 私は栽培を約束した。 そして「ゆきひかり」について調べてみた。 その結果他の人気品種とは違う成分を持つことが分かった。 現在、世に出ている米はほとんどうるち米と餅米の掛け合わせで出来た品種である。 例えばコシヒカリなどは粘りがあって美味しいお米だがその粘りは餅の成分が含まれているからだ。 しかし、「ゆきひかり」は先祖代々がうるち米同士の掛け合わせで出来た珍しい品種。 脂肪も他のコメより少ない。 こうした性質の「ゆきひかり」をいろいろ調べながら漢方薬や微生物を使用した 特殊な農法を用いて「ゆきひかり」を栽培した。 そして1年後、約束どうりその女性の方に「ゆきひかり」を提供した。大変喜んでおられた。私も嬉しかった。 その後、皮膚科のお医者さんの紹介や口コミで少しずつ問い合わせがあります。 ゆきひかりは種が少なくなり増やすのは難しい。
しかし、喜んで頂いているお客さんの顔が忘れられず、今日も頑張ろうと田んぼへ向かう。

ゆきひかりを作るきっかけになったお客様の出会いを書きました。
1999年7月 北海道新聞搭載記事です。

最低の経験して農業へ
Essay02

私は稲作農家の3代目だ。 北海道の大雪山系が一望できる水田で有機米を栽培している。 外での農作業はすべて終わりいま一息ついているところだ。 こうして農業という仕事を楽しんでいる自分が不思議でたまらないときがある。 数年ほど前までは農業が嫌いだった。 農業と聞くと田舎臭いとか、汚いというイメージがあった。 中学や高校の時期はカッコつけたいという思いが強く自分の家が農家であると知られるのが恥ずかしかった。 父や祖父からは農業の3代目後継ぎとして期待されていたが、私は農家の跡継ぎになる気は全くなく、 19歳の時に、札幌の大手住宅メーカに入り営業の職に就いた。 都会に憧れていた私は期待感でいっぱいだった。 営業は結果が全ての世界。 営業の経験など全くなかった私はひたすら努力するしかなかった。 朝の8時から夜の10時ごろまで仕事を続け、知らない家に一日に何十件も訪問した。 時には犬にかまれたり、お客さんに冷たくあしらわれたりもした。 社会の現実は厳しかった。 自分のマンションには寝に帰るだけの毎日。 食事は外食か、インスタントものばかりだった。 営業の仕事なのでそれも当たり前かなと当時は思っていたが、ストレスは心と体に確実にたまっていった。 8ヶ月ほどたったある日、体に変調が起きた。 頭が重くなり、やせていた体が急速に肥満し始めた。 そして、仕事も満足のいく結果がでなく、すっかり自分に自信をなくしてしまった。 1年足らずで会社を辞め、旭川の実家に戻らざるを得なかった。 悔しかった。 しかし、この”最低の経験”が農業に対するイメージ、考えを大きく変えるきっかけになった。 実家に戻った後は、家事の手伝いをしながら療養した。 のんびり体を休め、目の前の田畑で取れた有機米や野菜を食べた。 食べてみると、そうした有機米や野菜がすごくおいしいことに気がついた。 以前は何気なく食べていた野菜なのに・・・。 そして、毎日、天然のものを食べているうちに、体の調子がよくなった。 自然味いっぱいの空気を毎日吸っていると、やがて心のストレスも消えてしまった。 私は2つのことに気がついた。 1つは、札幌での食生活が基本的に誤っていたこと。 もう一つは、人間の健康と自然環境を守る農業はすばらしい営みであること。 札幌の”最低の経験”に大事な肥料が隠されていたのかもしれない。 私は農業を始めた。 そして出来るだけ身体に優しい作物を消費者の方に提供しすることを決意した。

私が農業をするきっかけとなった出来事です。
1998年11月26日 北海道新聞搭載記事です。

ゆきひかり米と
たんぱく質について

Essay03

粘りと糖質の成分アミロペクチン たんぱく質や粘りが少ないゆきひかり米と現在、世にでている白米について栄養学的に考えてみます。 もち米にはアミロペクチンという成分が100%含まれています。 アミロペクチンは粘りと糖質です。 昔の日本のお米は卑弥呼の時代の赤米から始まりパサパサした粘りが少ないお米が食べられてきました。 しかし、徐々に粘りがあるお米が日本の食生活に好まれるようになり、 もち米とのかけ合わせで今のコシヒカリやあきたこまちなどが改良されてきました。 ゆきひかりはもち系ではなく先祖代々がうるち米との掛け合わせで誕生した珍しいお米で、 粘りと糖質成分のアミロペクチンが少ないお米です。 粘りと糖質成分のアミロペクチンがもち系のお米と粘りが少ないゆきひかり米の違いです。 アミロペクチンがアレルギーと関係している可能性があるという栄養士さんの話もあります。 たんぱく質(特にグロブリン)について よくアレルギー食品にたんぱく質を除去したものがあります。 それから、市川農場では、たんぱく質が少ないゆきひかり米よりもたんぱく質を更に 除去した「グロブリンカットゆきひかり」77%精米があります。 (グロブリンカットゆきひかり米とはたんぱく質を更にカットする為に 特殊な精米機でお米を削り丸いお米になる商品です。) この精米方法は最初は私自身よく理解していなかったのですが、今年の2月にようやくこの精米方法を理解しました。 たんぱく質とアレルギーの関係を栄養学的に考えてみます。 たんぱく質は人間の免疫力ですが中でもたんぱく質の中のグロブリンの成分は特に人間の悪い菌などを 排除してくれる大事なものです。 例えばグロブリンが多く含まれるものの例で卵がありますが特に卵白に多くグロブリンが含まれています。 卵が生ものなのに数週間たっても菌が入らないで食中毒も起こりにくいのはグロブリンの免疫で菌が入らないからです。 しかし、その人間の免疫力で大切なグロブリンが体質に合わない人が多くなってきているそうです。 栄養的に考えると免疫力があるグロブリンが含まれる通常の白米、又は玄米を食べた方が栄養に良いのです。 しかし市川農場では昨年あたりからお客様から更にたんぱく質をカットする為に お米を削ってほしいというご要望が増えてきました。 身体に合わないのでどうしてもということで市川農場でもやむをえず、たんぱくが少ないゆきひかり米を特殊な精米機で更にたんぱく質をカットした「グロブリンカットゆきひかり米」を今年から正式に新商品にしました。 現在のゆきひかりのご注文はほとんどが通常のゆきひかり米ですが、 ご注文の約1-2割がグロブリンカットゆきひかり米です。 私の本当の願いは「グロブリンカットゆきひかり米」を必要としなくてもよくなってくれれば・・・と 思っているのが正直な気持ちです。 たんぱく質のグロブリンは人間の免疫力で大切なものだからです。医学がもっと発達してそして、 中国の農薬づけの輸入ものがないで国産の安全な野菜。 化学的な添加物などがない商品ばかりがお店にならんでいる。 そして様々な環境問題も解決している。 そんな健康そのものの未来を望んでいます。 そんな日が訪れるまで必要としている方々(医師からグロブリンカットゆきひかりを食べても大丈夫とOKが出た方) の為にコストはかかりますが頑張ってグロブリンをカットしたゆきひかりをご提供致します。

私が農業をするきっかけとなった出来事です。
2002年3月1日 市川農場HP搭載記事

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